~リカラーについて~
革の表面を、断面で見てみると、
革の上に、バインダー層と呼ばれる、顔料(カラー剤)の層、
その上に、トップ層と呼ばれる、汚れや傷を防ぐために、透明の保護塗料が塗られている層があります。
革の種類によって、染め方が変わってきますが、主なリカラー方法は3通りです。
・染料仕上げ
・顔料仕上げ
・セミアニリン仕上げ
となります。
〜染料仕上げ〜
染料仕上げとは、先ほどの3層の一番下、革の部分を染料で染め上げる方法です。つまり、バインダー層はなく、2層となります。
スウェード、ヌバック、キャンバス、ヌメ革といった革へのリカラー方法となります。
手順としては、
①革表面のクリーニング
②染め上げ
③保護
となります。
①クリーニング
リカラー前に必ず、起毛の間にあるゴミを落とします。怠るとうまく色が乗らず、仕上がりが変わってきます。
こちらが毛が抜けにくくおすすめのブラシとなります↓
表面をゴシゴシ擦るのではなく、一定方向に優しくシャッシャッと埃を取るイメージで掃いてください。
②染め上げ
染め上げ方法は2通りで、
筆を使って塗っていく方法
エアブラシを使って吹き付けていく方法
があります。
ただ、筆で塗っていく方法は、できなくもないのですが、染料を多量に消費する上、ムラができやすくあまりお勧めしません。
エアブラシを使って吹つけていく方が仕上がりが綺麗になり、作業効率も良いのでお勧めです。
お勧めのエアブラシはこちらです↓
染料を吹き付ける際、細かく飛び散るため、屋外で吹き付けるか、こちらのエアーブースがあると気にせず屋内でも吹き付けが可能です↓
そのほかに、
マスキングテープ
ゴム手袋
ドライヤー
も用意してください。↓
染色したくない他の素材の箇所にはマスキングテープを貼り、準備が整ったら染料の調合に移ります。
染料の原液を水で薄めていきますが、色落ちせず綺麗に染色できる基本の割合は、
染料 : 水=1 : 1
となります。色が薄いようでしたら、染料を足していってください。
よくかき混ぜ、修正箇所全体的に均等に塗り付け、もしくは吹き付けを行ってください。
染色し終わったら、ドライヤーで全体を乾かしていきます。
乾いたら、ムラがあるかどうかを明るいところ、できれば太陽光のもとで確認してください。
この工程を2〜3回ほど繰り返してください。
ムラがあるからといって何度も重ねて吹きつけてしまうと、生地がパキパキにかたくなってしまうため気をつけてください。
ムラなく染色できたら、色落ちしないように、また傷や汚れがつきにくいように、保護塗料を塗っていきます。
③保護
染料仕上げの場合、保護塗料には撥水剤を使用します。
撥水加工はエアブラシで吹き付けていきます。
染色した箇所全体に吹きつけが終わったら、ドライヤーで全体を乾かします。
この作業を4〜5回繰り返してください。
〜顔料仕上げ〜
顔料仕上げとは、先ほどの3層の真ん中、バインダー層に当たる、革の上に顔料を塗って着色する方法です。
つまり↑の画像は、黒色の商品ということになります。
もとの商品の色と同じ色にリカラーする場合、多くは顔料仕上げを用います。
手順としては、
①革表面のクリーニング
②塗り付け
③保護
となります。
①クリーニング
表面の脂汚れや埃を取り除くため、まずはクリーニング作業を行っていきます。
クリーニング剤としてリムーバーCやIPAを使います。こちらから購入できます↓
その他にも、
馬毛ブラシ
ゴム手袋
マイクロファイバークロス
ドライヤー
も用意してください。↓
それではまず、馬毛ブラシで表面を軽く掃きます。
次にリムーバーCを水で希釈します。原液に近い状態だと洗浄力が強すぎる場合があるので、
リムーバーC : 水=1 : 1
で混ぜてください。
クロスに希釈した液を染み込ませ、全体を優しく拭いてください。こすり過ぎには注意です。
少し洗浄力が弱いようであれば、原液を足していって調節してください。
拭き終わり、汚れやゴミを取り除くことができたら、ドライヤーで全体を乾かします。
②塗り付け
次に顔料を使って色をつけていきます。
まずは、顔料を使って商品の色と同じカラーを作っていきます。黒以外は、この作業が一番難しいですので、慣れるまで根気強く調合してください。
揃えていただきたい顔料の色は、
黒・白・赤・青・黄
となります。この5色があればほとんどのカラーを作ることができます。
補助として、こちらの調合アプリを使用します。混色ツール
詳しいアプリの使い方はこちらの記事↓
あくまで補助ですので、商品の色には、何色が何%含まれているのかという目安を確認して、混ぜ合わてください。
そして微調整をしていくのですが、この作業が難しいところではあります。
液体状の色を見て、商品の色と一緒だと思っても、いざ塗ってみて乾かすと全然違うなんてことはザラにあります。
商品の隅のほうに綿棒の先くらいの点で塗ってみて、ドライヤーで乾かし、色が完全に一致しているか確認してください。
濃ければ白を、薄ければ黒を、赤みが強ければ青を…と、何度も足しては塗ってを繰り返していくとピタッと合う時が必ず訪れます。
商品に試し塗りをしても、少し水を含ませたクロスで拭き取れば、乾いていてもすぐに拭い取れますので、安心して行ってください。
私は最初この作業で一色作るのに2時間近くかかっていました。泣
そして、ピタッと合ったら、完成した顔料に、レザーバインダーという液体混ぜていきます。
レザーバインダーとは、顔料と革の密着度を高める役目があります。↓
混ぜる分量は、
調合済み顔料 : レザーバインダー=1 : 9
となります。
さらに完成した液体に、今度はレザーマットクリアという液体を混ぜていきます。↓
レザーマットクリアとは、艶調整剤で、塗り終わったあとの顔料の嫌な艶を消してくれます。
混ぜる分量は、
レザーバインダー入り調済み顔料の5%
となります。
これで塗料は完成しましたので、水を含ませた筆を使って修正箇所に塗っていきます。
この時、筆に顔料を含ませすぎないよう注意してください。
厚塗りより、薄塗りで2回重ね塗りした方が綺麗に仕上がります。
このように、内側の擦れ照りも綺麗になります。
縫合糸が商品カラーと違う色の場合、糸まで塗ってしまうと後戻りできないため、縫合部分や布生地、ロゴの近くなどは、細心の注意を払って塗ってください。
また、筆跡にも気をつけてください。
スムースレザーなどツルツルしている革に顔料仕上げを施す場合、乾いた後に筆跡が残ってしまうことがあります。
ツルツルした表面の革には、エアーブラシさか、もしくはスポンジを使って叩き塗りしてください。↓
塗り終わり乾かして見ると、テカテカしていると思いますが、気にせず次の工程に進みます。
③保護
最後の工程で、保護塗料を塗っていきます。
トップコートと呼ばれるスプレー缶タイプの保護塗料を吹き付けていきます。↓
下の商品のように、
艶のある商品には、艶出しトップコートを、
艶のない商品には艶消しトップコートを吹きかけていきます。
30cmほどの間隔を保ち、常に腕を動かしながら、顔料を塗った箇所に満遍なく吹きかけてください。
近すぎたり、同じところに集中して吹きかけると、ローが固まったように白くなってしまいますので、注意が必要です。
また、かなりシンナー臭もキツイため、マスクをし、なるべく屋外で吹きつけてください。
マスクなしで吸い込みすぎると、すぐに喉が痛くなります。泣
吹きつけてはドライヤーで乾かすという作業を4回ほど繰り返すと、色艶もなじみ、保護が完了となります。
最後に臭いを飛ばすため、2日ほど直射日光の当たらない、風通しの良いところに置いておいてください。
〜セミアニリン仕上げ〜
セミアニリン仕上げは、黒以外のカラーを黒に塗り替えたい時によく使われます。
手順としては、
①革表面のクリーニング
②染め上げ
③塗り付け
④保護
となります。
①、③、④は顔料仕上げと、②は染料仕上げと同じやり方となりますので、割愛します。